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月刊 経団連

月刊 経団連2014年11月号

特集 成長産業としての農業 ~抜本的な競争力強化に向けて

巻頭言

気象予測と地域の取り組みにより防災でも世界のフロントランナーへ

石原邦夫 (経団連副会長/東京海上日動火災保険相談役)

美しい国土と四季に恵まれた日本は、宿命的に自然災害大国でもある。東日本大震災のような地震はもとより、特に近年は、記録的な集中豪雨や大規模な土砂災害が発生し、昨年フィリピンを襲った最大風速80mに達するような「スーパー台風」が日本を直撃する恐れさえ指摘されている。

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特集

成長産業としての農業 ~抜本的な競争力強化に向けて

日本の農業は、農業従事者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の拡大などに直面している。TPP(環太平洋経済連携協定)の締結を見据えて、国際競争力の強化が急がれる。そうしたなか、安倍政権は、成長戦略の目玉の一つとして、抜本的な農業改革案をまとめた。日本の農業は、現状の課題を克服し、成長産業化を実現できるのか。これからの農業のあり方について議論した。

座談会:成長産業としての農業

  • 十倉雅和 (経団連審議員会副議長・農政問題委員会共同委員長/住友化学社長)
  • 萬歳 章 (全国農業協同組合中央会会長)
  • 高橋はるみ (北海道知事)
  • 生源寺眞一 (名古屋大学大学院生命農学研究科教授)

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十倉雅和 (経団連審議員会副議長・農政問題委員会共同委員長/住友化学社長)
高齢化や後継者不足に悩む日本の農業の成長産業化・競争力強化を進めるためには、企業も含め、経営感覚溢れる新たな担い手を確保していくことが急務である。経団連としても、JAや日本農業法人協会との連携等を進めている。住友化学では、農業経営、農業者を総合的にサポートする「トータル・ソリューション・プロバイダー」というビジネスを全国に展開し、実際に農業法人も運営している。政府には、イノベーションを促すような経済界と農業界の連携の取り組みを支援してほしい。

萬歳 章 (全国農業協同組合中央会会長)
農業者の所得増大、農業の競争力強化を図るには、経済界と農業界が連携して、国産農畜産物のバリューチェーンを構築する必要がある。経済界と農業界で認識を共有しつつ、具体的な「提携」を生み出していかなければならない。現在検討を進めているJAグループの自己改革にあたっては、外部有識者の意見を取り入れつつ、組合員目線で検討を進め、その考えを早急に取りまとめたい。JAグループは、農業者の所得増大や地域の活性化等に向け、引き続き役割を果たしていく。政府には、農業者・農業団体の取り組みの後押しをお願いしたい。

高橋はるみ (北海道知事)
北海道は、食料自給率が200%で、カロリーベースでは日本全体の約二割を生産している。耕地面積においても都府県平均の15倍を誇り、EU並みの大規模化が進んでいる。一方で、農産物の付加価値を上げることが課題であり、たゆまぬ技術開発や企業との連携強化、独自の表示制度「ヘルシーDO」の導入等によって克服の努力をしている。政府の農政改革においては、全国一律に議論されることで、北海道の農業が伸びなくなることを危惧する。地域の違いが反映された政策を望む。

生源寺眞一 (名古屋大学大学院生命農学研究科教授)
日本の農業全体が縮小しているように語られているが、施設園芸や畜産など成長している部門もある。土地利用型農業で生計を立てるには、規模拡大を進めつつ、品目の多角化や食品産業の要素の導入などによって「経営の厚みを増す」ことが求められる。また、輸出拡大には、プロダクトアウトではなく、マーケットインの発想を持たなければならない。これからの農業政策は、納税者・消費者の立場から納得できるものであるか、次世代の農業の担い手を支えるものになっているかが問われる。

根本勝則 (司会:経団連常務理事)

  • ●日本の農業の現状・課題
  • 農業が直面している課題に取り組むことは日本の将来にとって重要である
  • 農業が果たす多様な機能を評価してほしい
  • 北海道農業の四つの課題とその対策
  • ●農業の成長産業化・競争力強化に向けて必要な取り組み・施策
  • 多角化、六次産業化で経営の厚みを増す
  • 経済界との連携で国産農畜産物のバリューチェーンを構築する
  • 企業の技術・ノウハウを活かして地域農業を活性化する
  • 成長産業化の成功事例を積み上げる
  • 輸出拡大に向けて経済界、政府との連携を強化する
  • マーケットインの発想を持って輸出拡大を目指せ
  • ●農協改革に向けた取り組み
  • 徹底した議論のなかでJAグループの自己改革を進める
  • ●政府の農政改革に対する期待
  • 地域ごとの違いを反映できる政策を求める
  • 地域ごとに多様な経営体モデルを示す
  • イノベーション創出を促す取り組みに支援を
  • 次世代の農業の担い手を支える農政を

九州の農業の成長産業化に向けて
 麻生 泰 (九州経済連合会会長)

  • 農業の魅力を高める
  • 輸出拡大に向け販売ルートの強化を
  • 企業誘致の強化を

農業の六次産業化の先端事例
 藤尾益雄 (神明ホールディング社長)

  • 日本農業の将来と「神明アグリイノベーション」のあり方
  • アグリ事業の活動事例
  • 今後の展望

施設園芸農業の推進
~農業の現況と将来性について
 阿部隆昭 (グランパ社長)

  • 構造的な農業の課題
  • 今後の農業対策とその考え方
  • 待ったなしの農業改革とその取り組み

わが国における農業政策の改革とその課題
 中嶋康博 (東京大学大学院農学生命科学研究科教授)

  • 農業政策の改革論議の枠組みと論点
  • 持続可能モデルの構築と政策の安定性

『2013年農業法人白書』から見た農業法人の実態
 日本農業法人協会

  • 農業法人の平均的な経営規模
  • 農業法人が抱える経営課題
  • 六次産業化と海外事業展開
  • 今後の農業法人の方向性

農業の担い手育成の現状と課題
 岡本利隆 (全国農業高等学校長協会理事長)

  • 農業高校の変遷と現状
  • 高等学校における農業教育の取り組み
  • 日本農業と就農の現状
  • これからの農業への期待

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一般記事

アジアの持続的成長に向けた各国経済団体首脳の連携を確認
~第5回アジア・ビジネス・サミットに参加して
 榊原定征 (経団連会長)

  • アジアの成長に貢献するために
  • 環境問題やビジネス環境整備で共同歩調を

【提言】
多様で柔軟な企業年金制度の構築に向けて

http://www.keidanren.or.jp/policy/2014/077.html
 斎藤勝利 (経団連副会長・社会保障委員長/第一生命保険会長)
 鈴木茂晴 (経団連社会保障委員会共同委員長/大和証券グループ本社会長)

  • 拠出限度額の大幅な引き上げを
  • 円滑な制度間移行に向けて
  • 中小企業への普及と個人型DCの再検討を

戦略的重要産業分野における互恵的協力関係の構築に向けて
~日・ウクライナ官民経済ミッションを派遣しビジネス・コンサルテーション会合を開催
 佐々木則夫 (経団連副会長・日本NIS経済委員長/東芝副会長)

  • ビジネス・投資環境の現状
  • 農業の生産効率の向上に向けて
  • エネルギー関連分野での支援の必要性

ブラジルとの経済関係の一層の発展に向けて
~第17回日本ブラジル経済合同委員会を開催
 飯島彰己 (経団連審議員会副議長・日本ブラジル経済委員長/三井物産社長)

  • 日伯双方から協力に向けた具体定な提案
  • 日伯EPAに向けた一歩

連載

  • 未来を創る企業力 (4) ~100年経営の真髄に迫る~
    日本の「ものづくり」の精神が世界の原動力になる。
    日本車輌製造

    • 少需要の車両にも取り組み独自のポジションを確立
    • 現地の地域社会と協調するグローカルな海外戦略
    • 創業以来一世紀を越えて受け継がれ育まれた現場力
  • 農業の競争力強化と成長産業化に向けた経済界と農業界の連携・協力 (2)
    農業IT管理ツール「豊作計画」を活用した米生産プロセスの改善
    トヨタ自動車

    • 米生産プロセスの改善
    • 農業IT管理ツール「豊作計画」の開発
    • 農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業への参画
  • あの時、あの言葉
    波頭をとらえる
    上月拓也(コナミ社長)

  • 世界に羽ばたく人づくり (8)
    IB 200校プロジェクトの進捗状況
    大迫弘和(リンデンホールスクール中高学部校長/広島女学院大学客員教授(IB調査研究室長))

    • 21世紀型教育としてのIB
    • IB日本アドバイザリー委員会の成果
    • 大学入試でのIBの活用
    • IBの広がり
    • オールジャパンの協力体制
    • リンデンホールスクール中高学部のIB教育
  • エッセイ「時の調べ」
    音楽に完成はない
    ~指揮者生活50年を振り返って
    秋山和慶(指揮者)

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