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月刊 経団連  座談会・対談 社会保障制度改革の行方 ~受益と負担の均衡がとれた持続可能な制度の確立を目指して

久保田政一
司会:経団連専務理事

宮島香澄
日本テレビ放送網報道局解説委員

川渕孝一
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授/21世紀政策研究所研究主幹

亀田信介
医療法人鉄蕉会亀田総合病院院長

斎藤勝利
経団連副会長・社会保障委員長
第一生命保険会長

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斎藤勝利 (経団連副会長・社会保障委員長/第一生命保険会長)
企業は、経済成長を牽引する主体であると同時に、新たな雇用機会を創出し、税や社会保険料負担の担い手として、社会保障制度をはじめとする国民生活の基盤を支えている。成長と両立する社会保障制度を構築するためにも、給付の重点化・効率化と、社会保険料と税の役割の一体的見直しが欠かせない。これらは、政治の強いリーダーシップのもとで着実に推進することが求められる。経団連としても、引き続き、政府・与党など関係方面への働きかけを強化していく。

亀田信介 (医療法人鉄蕉会亀田総合病院院長)
社会保障制度改革への取り組みについては、控除対象外消費税の問題、消費税増収分を活用した新たな基金の設置、今回の診療報酬改定など、現場の医療機関としては納得できない点がいくつかある。亀田グループでは、民間主導の地域包括ケアの構築に向けて、情報基盤の整備などを進めている。この前提となるのは国民共通ID(マイナンバー)であり、医療の効率性・透明性・質の向上のためにも、政府には、ICTの活用を推進してもらいたい。

川渕孝一 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授/21世紀政策研究所研究主幹)
医療・介護は、ファイナンシング(財源)、ペイメント(支払)、デリバリー(提供体制)という三つの観点から議論しなければならないが、残念ながら社会保障制度改革国民会議では、いずれについても十分な議論がなされなかった。ヘルスケア分野は利害関係者が多く、改革を進めるのは容易ではない。しかし、日本の社会保障制度のサスティナビリティーを維持するには、もはや待ったなしの状況にある。利害関係者が譲歩できるような、実現可能な工程表を早急につくらなければならない。

宮島香澄 (日本テレビ放送網報道局解説委員)
地域ごとに異なる状況に対応しようとしている点、国民健康保険(国保)の保険者機能を強めようとしている点で、今回の社会保障制度改革は評価できる。医療と介護を一体化する方向性も良い。しかし、重点化・効率化に関しては、十分に議論がなされていない。また、医療資源の効率的な活用のためには、国民の意識改革も必要である。困難は承知しつつも、抜本的な改革は必要だと思う。その青写真の共有につながるよう先進的な取り組みを紹介するなど、丁寧な報道を心がけたい。

久保田政一 (司会:経団連専務理事)

  • ●社会保障制度改革への取り組みをどう見るか
  • 成長と両立する持続可能な社会保障制度の再構築のために
  • ファイナンシング、ペイメント、デリバリーについての議論が不十分
  • 医療の現場から見た社会保障制度改革の問題点
  • 重点化・効率化をさらに進める必要がある
  • ●医療・介護分野の重点化・効率化策
  • これからのヘルスケア産業の役割と健康経営の取り組み
  • ICTを活用した地域包括ケアの実現に向けて
  • 現行の診療・介護報酬制度の根本的な見直しが必要
  • 家庭医制度によって医療資源の効率的な活用が可能
  • ●今後の制度改革に向けて
  • 利害関係者が譲歩できる実現可能な工程表が必要
  • 医療・介護分野は日本の経済フローの最大セクター
  • 国民の意識改革も必要
  • 社会保険料と税の一体的な見直しを

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