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月刊 経団連  巻頭言 わが国経済の持続的な成長の実現に向けて

大宮英明 (おおみや ひであき) 経団連副会長/三菱重工業会長

円高の是正が進み、株価がリーマンショック前の水準を回復するなど、わが国には景気回復に対する期待感が満ちている。TPP(環太平洋経済連携協定)への参加は、経済成長に加え、日米同盟のさらなる深化とアジア太平洋地域の安定化にもつながるものと期待される。地域の貿易ルールづくりに参加することは、今後の経済連携協定を主導していくうえにおいて大変意義深い。高いレベルの貿易・投資の自由化が実現し、わが国産業が抱える諸課題を克服する契機にもなろう。

今後、経済連携を通じ貿易・投資が活発化する新興国では、インフラの整備がますます急務となってきており、高速鉄道や原子力発電所など、大型プロジェクトが計画されている。そうしたなか、近年は、設備の供給に加え、ファイナンスの供与や納入後の運営管理など、需要者側のニーズは多様化かつ複雑化している。また、先進国のみならず、一部の新興国の激しい追い上げや、次々と生み出される競合他社のビジネスモデルにも直面し、競争はますます厳しくなっている。

巨大かつ高度なインフラシステムをつくり上げるには、さまざまな構成要素のすり合わせが必要だが、すり合わせこそわが国が強みを有する分野である。また、設備の供給に伴うファイナンスや運営管理など、単独では対応が困難な需要者の要望に対しては、官民が連携し、ソフトとハードをパッケージ化して輸出するなど、新たなビジネスモデルの展開が推進されている。企業にはイノベーションを生み続ける努力が求められているが、イノベーションを製品化あるいは事業化する段階において、さまざまな課題が存在する。

例えば、当社が開発中の旅客機MRJについては、試験飛行を目指し、開発が急ピッチで進められているが、開発完遂後の量産化や販売金融などに対し、官民の支援を得ている。航空機産業は裾野が広く、経済への波及効果も大きい。日本経済の持続的な成長の一翼を担うべく、わが国の英知を集結し、事業の玉成に向けて邁進したい。

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