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月刊 経団連  巻頭言 日本再生に向けた行動を

伊東信一郎 (いとう しんいちろう) 経団連審議員会副議長/全日本空輸社長

今月は米国大統領選挙だが、その行方はさておき、対外経済政策に関しては、成長著しいアジア太平洋地域に軸足が置かれるものと考える。そして、その中核となる政策はいうまでもなく環太平洋経済連携協定(TPP)だ。

しかし、わが国ではTPP参加検討の表明からすでに二年が経過しながら、いまだに決断に向けた議論さえ進んでいない。このままでは、日本が望むかたちでの交渉の余地がどんどん狭まり、時間切れとなりかねない状況である。

わが国は明治維新に代表されるように、危機感をバネに、時に脅威と思われるものをも取り込み国力につなげてきた。TPPに関して常に議論となる農業についても、わが国が得意とする高いレベルの品質管理等、日本の叡智をもってすれば世界的に競争力ある産業に育つはずだ。

例えば、北海道十勝産の長芋は、現在台湾や北米において、他国産に比べ非常に高い評価を得ている。その大きな理由は、「安全安心」である。トレーサビリティーが徹底され、かつ食品衛生上の国際規格認証がなされた施設で洗浄や選別がされていると聞く。まさに、国際的視野を持って「攻めの農業」に転じた好例であろう。また、佐渡の日本酒「真野鶴」は、減農薬栽培の酒米づくりを行う地元の農家と共につくり上げた酒で、米国・欧州に加え、ロシアへの輸出も始めた。銘酒が世界の人々に感動を与え、日本の地域文化や米作への関心につながり、日本米の新たな価値が創造される。こうした好循環を起こす余地はまだまだたくさんある。

私どもの航空産業でも、今年LCC(Low Cost Carrier)三社が運航を開始したが、各社ともに好調で、新規顧客の創出につながっている。日本には、知恵と工夫でまだまだ成長できる資源が眠っているのである。

じっとしていても何も起こらないし、新たな価値も生まれない。立ち上がって発展の芽を育てるも、腐らせるも私たち日本人次第なのである。わが国が一刻も早くTPPに参加表明し、この国が再び活力ある国に向かって攻めの姿勢に転じるべき時である。

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