宗岡正二(経団連副会長・中国委員長/新日本製鐵社長)
上海宝山製鉄所建設プロジェクトは、今日、民間による対中技術協力、経済協力のシンボル的な事業として語られている。先輩たちが築き上げた日中間の信頼関係を、さらに成熟したパートナーシップとしていくために、企業は、これからも成功体験を一つひとつ積み上げていかなければならない。政治には、企業活動が円滑に行えるよう、知的財産権保護の問題などの解決を、中国政府に働きかけていくことを期待したい。
張富士夫(トヨタ自動車会長/日中経済協会会長)
トヨタ自動車は、1970年代後半から中国の自動車メーカーに対し、「トヨタ生産方式」の講義を行ったり、視察研修を受け入れたりしてきた。こうした交流が、今日の中国における事業の礎となっている。現在も、「環境保護」「交通安全」「人材育成」を柱に、中国でのCSR活動を展開している。成熟した日中関係の構築のために、政治には、指導者レベルでの信頼関係の構築と、日中韓FTAなど経済連携の一層の推進を期待したい。
国分良成(慶應義塾大学法学部教授(現防衛大学校長))
この40年間を振り返ると、トウ小平氏が「南巡講話」を行って、市場経済路線へとかじを切り、天皇陛下の訪中が実現した1992年を転換点として、日中関係は大きく変貌した。中国の経済力が日本と並んだいま、歴史上初めて水平な日中関係という状況が生まれている。成熟した日中関係の構築のためには、政治的なパイプをより強固なものにし、地域の課題に共同で対処するという「戦略的互恵関係」を、より具体的に推進していくことが求められる。
中村芳夫(経団連副会長・事務総長)
中国は、この40年の間に、日本からの無償資金協力を受け入れていた時代を経て、2001年にはWTOへの加盟を果たした。その後も内需の拡大と輸出をエンジンに成長を続け、2010年には日本を抜いて世界第二位の経済大国となった。日本はいま、大きく変わる中国と今後どのようなパートナーシップを築いていくのかが問われている。今年は「日中国民交流友好年」として、米倉会長を委員長とする実行委員会を日本側で立ち上げ、オール・ジャパンで交流事業を進めていく。
- ●国交正常化後の日中関係40年を振り返って~その発展と意義
- 1992年の転換~南北関係から水平関係に
- 宝鋼製鉄所建設プロジェクトに学ぶこと
- 民間ベースでの取り組み~トヨタ自動車と日中経済協会
- ●理想的な日中のパートナーシップとは
- 互いに理解し、尊重し合える関係を築く
- 省エネ・環境分野での協力が鍵
- ●企業間交流の現状と課題
- 中国における日本企業のCSR活動
- 省エネ・環境分野における鉄鋼業界の貢献
- ●成熟した日中関係を構築するために
- 政治指導者レベルでの確固とした信頼関係の構築を
- 成功体験を一つひとつ積み重ねていくことが大切
- 戦略的互恵関係を具体的に進めるべき