[ 日本経団連 ] [ 意見書 ]

「企業行動憲章」実行の手引きの要点

2004年5月18日
(社)日本経済団体連合会

以下の各条項に付記した項目は、会員企業が企業行動憲章の精神を自主的に実践していく上で必要と思われる項目を例示したものである。各会員においては、それぞれの業態、特徴等を踏まえて、これらの項目を参考に具体的な行動のあり方を工夫することが期待される。

  1. 社会的に有用な製品・サービスを安全性や個人情報・顧客情報の保護に十分配慮して開発、提供し、消費者・顧客の満足と信頼を獲得する。
    1−1 消費者・顧客のニーズを把握し、社会的に有用な製品・サービスを開発、提供する。
    1−2 製品・サービスの安全性と品質を確保する。
    1−3 消費者・顧客に対して、製品・サービスに関する適切な情報を提供する。
    1−4 消費者・顧客からの問い合わせ等には誠実に対応する。
    1−5 個人情報・顧客情報を適正に保護する。

  2. 公正、透明、自由な競争ならびに適正な取引を行う。また、政治、行政との健全かつ正常な関係を保つ。
    2−1 独占禁止法の遵守につき、社内での徹底を図る。
    2−2 適正な購買取引方針を確立する。
    2−3 自社の機密情報を管理し知的財産を保護する。また、他者の知的財産を尊重する。
    2−4 法令に従い輸出管理体制を整備する。
    2−5 不当な利益等の取得を目的とする贈答・接待を行わない。
    2−6 政治、行政と透明度が高い関係を構築するとともに、政策本位の政治の実現を支援する。

  3. 株主はもとより、広く社会とのコミュニケーションを行い、企業情報を積極的かつ公正に開示する。
    3−1 株主総会やインベスター・リレーションズ(IR)活動を通じて、株主・投資家等とのコミュニケーションを促進する。
    3−2 ステークホルダーに対して、適時適切に情報を開示する。
    3−3 広報・広聴活動等を通じて、社会との双方向のコミュニケーションを促進する。

  4. 従業員の多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する。
    4−1 多様な人材が個々の能力を十分に発揮できる人事処遇制度を構築する。
    4−2 雇用における差別を行わず、機会の均等を図る。
    4−3 安全と健康のため、快適な職場環境を実現する。
    4−4 従業員の個性を尊重し、従業員のキャリア形成や能力開発を支援する。
    4−5 従業員と直接あるいは従業員の代表と誠実に対話、協議する。
    4−6 児童労働、強制労働は認めない。

  5. 環境問題への取り組みは人類共通の課題であり、企業の存在と活動に必須の要件であることを認識し、自主的、積極的に行動する。
    5−1 地球温暖化対策や循環型経済社会の構築に取り組む。
    5−2 事業活動における環境影響を評価し、環境負荷と環境リスクの低減に努める。
    5−3 環境問題の解決に資する革新的な技術、製品・サービス、ビジネスモデルの開発に努める。
    5−4 生物多様性の保全を含めた自然保護活動に取り組む。

  6. 「良き企業市民」として、積極的に社会貢献活動を行う。
    6−1 自らが取り組むべき社会的な課題について、資源や専門能力を投入し、その解決に貢献する。
    6−2 NPO/NGO、地域社会等、課題解決のために必要なパートナーと連携する。
    6−3 業界や経済界としての社会貢献活動に参画する。
    6−4 従業員の自発的な社会参加を支援する。

  7. 市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力および団体とは断固として対決する。
    7−1 反社会的勢力を排除するとの基本方針を明確に打ち出す。
    7−2 反社会的勢力の威嚇には、警察等と連携して対応する。
    7−3 業界団体や地域企業と連携し、反社会的勢力の排除に取り組む。

  8. 国際的な事業活動においては、国際ルールや現地の法律の遵守はもとより、現地の文化や慣習を尊重し、その発展に貢献する経営を行う。
    8−1 国際ルールを踏まえた行動規範と現地の法律の遵守を徹底する。
    8−2 現地の文化や慣習を尊重し、相互信頼を基盤とした事業活動を推進する。
    8−3 経営の現地化を進める。
    8−4 現地取引先における社会的責任への取り組みに関心を持ち、必要に応じて改善のための支援を行う。
    8−5 外国公務員に対して、不当な利益等の取得を目的とする贈答・接待を行わない。

  9. 経営トップは、本憲章の精神の実現が自らの役割であることを認識し、率先垂範の上、社内に徹底するとともに、グループ企業や取引先に周知させる。また、社内外の声を常時把握し、実効ある社内体制の整備を行うとともに、企業倫理の徹底を図る。
    9−1 経営トップは、リーダーシップを最大限発揮し、経営理念や行動規範の明確化、社内への徹底等にあたる。
    9−2 経営トップは、経営理念や行動規範の基本姿勢を社外に表明し、具体的取り組みについて情報開示する。
    9−3 全社的な取り組み体制を整備する。
    9−4 通常の指揮命令系統から独立した企業倫理ヘルプライン(相談窓口)を整備する。
    9−5 企業倫理・企業行動規範に関する教育・研修を実施、充実する。
    9−6 企業倫理・企業行動規範の浸透・定着状況をチェック、評価する。

  10. 本憲章に反するような事態が発生したときには、経営トップ自らが問題解決にあたる姿勢を内外に明らかにし、原因究明、再発防止に努める。また、社会への迅速かつ的確な情報の公開と説明責任を遂行し、権限と責任を明確にした上、自らを含めて厳正な処分を行う。
    10−1 経営トップは常日頃から、危機管理の視点に立って、緊急事態の発生を未然に防止するための社内体制を整備する。
    10−2 万一緊急事態が発生した場合には、経営トップ自らの指揮の下、速やかに事実調査、原因究明を行い、企業としての責任ある適切な対応方針・施策を打ち出す。
    10−3 社会に対して経営トップ自ら、事実関係、対応方針、再発防止策等について明確な説明を迅速に行う。

日本経団連は、不祥事を起こした企業に対して、自己責任に基づく申し出
を基に措置を決定して実施し、改善策とその実施状況の報告を要請する。
以上

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