わが国経済力の向上、グローバル化の進展に伴い、わが国企業の活動が国際的に及ぼす影響力は飛躍的に増大している。わが国企業が今後とも国際社会の一員として調和ある発展をとげ、世界とよく融合していくためには、海外における企業活動のみならず、国内においても世界に開かれた諸活動が望まれる。わが国企業の活動が公正なルールに基づき展開されていることを内外に示すことは、国際社会で活動するわが国企業の今日的責務でもある。
かかる考え方に基づき、経団連では、企業行動の一側面である購買取引について、わが国企業が踏まえるべき基本的ルールを「購買取引行動指針」として明らかにすることとした。各企業においては、自社の購買取引規定(あるいは購買取引原則、ガイドライン等)が以下の指針を踏まえたものであることを確認し、国際社会の一員としての責務を果たすべきである。
1.購買取引についての基本的考え方
- 購買取引は、優れた財およびサービスを経済合理性に基づいて選択し、購入することを目的とする。
- 購買取引は国内外に開放され、公平かつ透明とし、理解しやすい簡素な手続きによって行われる。
- 購買取引は、企業が社会に貢献する良き市民としての役割を果たすうえで、重要な役割を担っている。また、企業は購買取引にあたっても資源保護、環境保全に配慮する。
2.購買組織のあり方と義務
- 購買取引の機能を有する組織(以下「購買組織」といい、設計部門等を含みうる。)は、購買取引にかかわる決定を、原則として他の組織から独立して行うべきである。また、購買組織は営業部門など社内の他部門から明確に区分されることが望ましい。なお、購買組織以外の部門で行われる購買取引においても、本指針の基本的考えを適用するものとする。
- 購買取引の担当窓口は、具体的に(例えば組織、担当部課名、所在地、電話番号、責任者名等)外部に対して明示する。
- 購買組織は、自社の購買取引原則、新規購買取引先の審査・選定手続き、購買取引の決定手続き(以下「購買取引システム」という。)の全体の流れを対外的に明示する。この場合、必要に応じて外国語による資料を準備することが望ましい。
- 購買組織は、購買取引先となることを希望する企業等に対して、公平かつ公正な参入機会を与える。
- 賄買組織は、購買取引先となることを希望する企業等からの申し入れに対して、真摯に対応する。
3.購買取引の原則
- 新規に購買取引先となることを希望する企業等の資格審査は、当該企業等の実績、信頼性、技術力等を基準とし、その評価に基づいて行う。
- 個々の購買取引は、財・サービスの属性(仕様、品質、性能等)、提供条件(納期、価格等)、企業等の信頼性、技術開発力など、経済合理性に基づく基準によって決定する。
- 購買取引は、関連するすべての法律およびその精神を尊重して行う。
- 購買取引は、原則として文書による契約に基づいて行う。
- 購買取引契約の変更を交渉する権限は、原則として購買組織のみが持つ。
- 購買取引においては、その種類毎に標準的な契約年数を置くなど、新規参入者のための機会に配慮する。継続的・反復的な取引においては、定期的な契約の見直しを行う。
- 自社製品・サービスの販売等を直接の目的とする購買取引は、原則として行ってはならない。
- 自社内における購買品目の仕様、数量、取引条件等の情報は厳格に管理するとともに、購買取引を希望し、契約が成立する可能性のある企業等に対して公平に開示される。
- 購買取引先および見込取引先の情報は、契約に基づき、購買活動を行う上で必要なもののみを入手する。また、業務上知り得た情報は厳格に管理し、機密の保持に努める。
- 入札あるいは競合見積等を行った場合、購買取引先に選定しなかった企業等に対し、要望に応じ、選定しなかった事実およびその理由を明らかにする。
- 入札あるいは競合見積等を行っている間に、意図して特定の入札者等が有利になる条件の変更あるいは価格折衝を行ってはならない。
- 明らかに発注の意思のない見積り要請は行わない。
4.倫理原則
- 購買組織に属する者(以下「購買担当者」という。) は、購買取引先および見込取引先との個人的な利害関係を持ってはならない。
- 購買担当者は、購買取引先および見込取引先から謝礼などいかなる個人的利益も得てはならない。また、社会的常識の範囲を超えた接待や贈物を受けてはならない。
- 購買担当者は、購買取引先および見込取引先に対して寄附等を強要してはならない。
5.購買取引規定等の遵守
- 購買取引規定等の遵守状況については、少なくとも年1回の内部監査等を実施する。
- すべての役員および購買取引に関係する社員は、購買取引規定等を十分に理解し、遵守する義務を負う。
以上