月刊・経済Trend 2011年12月号別冊 寄稿〜震災後、企業はどう取り組んだか

日本郵船

経営委員
和崎揚子
(わさき ようこ)

日本郵船グループは「モノ運び」で培った技術とノウハウを生かし、従来より災害被災地や途上国の復興支援に向けてさまざまな支援活動を実施してきた。

今回の東日本大震災においても、グループ企業一丸となり「海・陸・空」のネットワークを通じて、支援活動を実施している。

2011年3月11日震災発生直後には代表取締役社長 工藤泰三を本部長とする対策本部を立ち上げ、社内の安全確認とともに被災者の救援・救済や被災地復興のための対策を検討した。支援金として5000万円を拠出、救援物資輸送協力の方針を決定し、同時に当社グループ社員の義援金の募集も開始した。

救援物資ホットライン便の設立


第1回救援物資ホットライン便

輸送協力では社団法人 日本経済団体連合会(経団連)と「第1回救援物資ホットライン便」を3月18日に設立し、モジュール船“YAMATAI”(当社グループ、日之出郵船(株)運航)による救援物資輸送を実施した。企業や団体から提供された食料品、乳児用品、衛生用品等の救援物資は24TEU(20フィートコンテナ24本、146トン)となり、神戸港から八戸港間の海上輸送を行った。救援物資は船上でトラックに積み替えられ、青森県、岩手県、宮城県の各被災地に届けられた。物資の受入れを担当していた青森県からは、「食料品や日用品などの供給が滞るなか、“YAMATAI”が八戸港に到着した時は、大変ありがたく勇気づけられた」という声があった。


第3回救援物資ホットライン便

また、4月1日に「第3回救援物資ホットライン便」を立ち上げ、当社グループ(株)日本コンテナ輸送のコンテナトレーラーによる救援物資の輸送協力を行った。4月末までに宮城県、岩手県の各被災地へ、生活用品、電化製品など20フィートコンテナ13本分の救援物資を輸送し、避難所のみならず仮設住宅などにも届けられた。

漁業の早急な再開を支援


寄贈した冷凍コンテナ

6月には三陸海岸地方(宮城県石巻市、気仙沼市、女川町、南三陸町、岩手県大船渡市等)の漁業の早急な再開を支援するため、一般社団法人 東北漁業再開支援基金・希望の烽火が進めている必要資機材の無償提供プロジェクトへの協力を開始した。本プロジェクトに賛同した約20の民間企業各社からの提供資機材はトラック、フォークリフト、コンピューター・机・椅子等事務用機器など多岐に渡る。当社では合計で100本の海上輸送用冷凍コンテナを送り、氷の貯蔵庫等として活用される。

岩手県大船渡市での復興支援


「飛鳥II」大船渡寄港(写真提供:郵船クルーズ)

「飛鳥II」を運航する郵船クルーズ(株)では、ゆかりのある岩手県大船渡市にて復興支援活動を行った。6月には社員有志が「飛鳥IIスタッフとのふれあいフェスティバル」を開催し、イベントを通して被災地のみなさんと交流した。7月には「飛鳥II」が震災後初めて大船渡港に寄港し、船内見学会や本船運航に関する課外授業などを行った。行事に参加した市民からは「元気をもらった。港が明るくなった」「飛鳥IIの変わらぬ入港が勇気を持つチャンスをくれた」という声が届いた。

社員ボランティアによる本業以外の支援活動

また、当社グループ社員はボランティアとして特定非営利活動法人の東京事務所にて支援物資の仕分け作業や事務所手伝い等に参加し、さらに10月からは岩手県陸前高田市でのボランティア活動も開始した。これは3ヶ月にわたり約120人のグループ社員を連続で派遣し、ボランティアとして瓦礫撤去や清掃など現地のニーズに合わせた作業に従事するというものである。このほか、日本郵船氷川丸のチャリティーデー入館料と船上で開催した蚤の市収益金を特定非営利活動法人ジェンに寄付するなど、本業以外でもさまざまな支援活動に取り組んでいる。

東日本大震災の発生から既に半年以上が経ち、いまなお、避難生活を強いられている方々をはじめ、被災された皆様に改めてお見舞い申し上げる。一日も早い復興をお祈りするとともに、当社グループとしても被災地の一日も早い復興・復旧に向けて、経団連や被災地の自治体、現地で活動するNPOなどと協力し、引き続き支援活動に取り組んでいきたい。

(9月26日記)

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