取締役執行役員専務 嶋谷吉治 (しまたに よしはる) |
このたびの東北大震災で被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げるとともに、一刻も早く被災地の復興が進められることを強く願います。
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに続いた津波は、KDDIの通信インフラに大きな被害を与えた。世界有数の地震国の通信事業者として、日々災害に対する備えを行ってきたが、今回の震災によって、未だ多くの課題があることが明らかになった。KDDIの通信ネットワークの復旧・復興への取り組みと今後の対策について述べることとしたい。
被災直後の仙台海底ケーブル陸揚げ局舎 |
地震直後、東北・関東地方ではau携帯電話サービスの通信量が平常時の40−50倍となる事態が発生し、これにより東北と関東地方で携帯電話が繋がりにくい状況に陥った。また、東北地方で発生した長時間の広域停電のため、au携帯電話基地局(以下、「基地局」)がバッテリー切れにより次々と停止し、3月12日には東北地方で最大で1,933の基地局がサービス停止する事態となった。さらに地震の影響で複数の光ファイバ基幹伝送路に損傷が生じ、通信疎通に大きな影響を与えた。大津波の影響は海岸部の多数の基地局や海底ケーブル陸揚げ局の損壊を引き起こした。
車載型基地局(陸前高田市) |
地震発生後直ちに、社長を本部長とする「災害対策本部」を設置するとともに、東北総支社(仙台)に「現地対策本部」を置いて、通信サービスの早期復旧に向けた体制を確立した。基幹伝送路は翌々日までには修理が完了した。岩手、宮城、福島の東北3県の被災地エリアでは停電や回線故障などで多数の基地局が停止しており、全国各ネットワークセンタから、移動電源車、車載型基地局を多数出動させて、避難所周辺でのau携帯電話サービスの復旧に努めた。併行して、設備の交換修理や衛星・マイクロ波回線による代替回線の構築を行い、損傷した基地局の復旧作業を進めた。また固定系回線についてもアクセス回線提供事業者と緊密に連携を行なって、早期のサービス復旧に努めた。
KDDIグループ一丸となって復旧作業を進めたことにより、au携帯電話サービスについては、福島原発制限地域を除き、4月末までに震災前とほぼ同等のエリアカバーまでサービスを回復させ、6月末には震災前と同等の通信品質に復することができた。さらに、6月以降は復興フェーズと位置づけ、仮設住宅・仮設役場等の建設進捗による被災地エリアの生活動線の変化に対応するかたちで、多数の新規基地局の建設を行い、au携帯電話サービスのエリア拡充を行った。
仮設住宅をカバーする基地局(陸前高田市) |
簡易基地局(福島県相馬市) |
これほどの広汎な地域にわたり通信インフラが損傷を受けた事態は過去に例がない。KDDIでは、改めてBCP対策を見直し、災害に強いインフラと迅速なサービス復旧という2つの観点から、来年度中に以下の対策を完了させる。
また、災害時には音声よりもつながりやすいメールや災害用伝言板による安否確認や情報共有が有効である。KDDIでは災害用伝言板の機能拡充、緊急速報メールや災害用音声お届けサービスの提供など、お客様の利便性向上に向けてサービスの充実も進めていく。
今日の情報通信社会の発展においてその基盤となっている通信インフラは、いつでも、どこでも、誰とでもつながることが当たり前となっていた。ところが今回、その便利な通信手段が一時的にせよその機能を損なったことで、被災地のみならず多くのお客様の社会生活に大きな影響を与えた。KDDIは改めて通信インフラの果たすべき社会的責任を認識し、平時・非常時を問わず、安定的に高品質な通信サービスを提供し続けることを目指し、今後も通信ネットワークの拡充と迅速な復旧のため、設備・機器の配備に努めるとともに、サービスの拡充に取り組んでいく。